無垢材の家といえば、住まいを建てる方なら誰もが一度は憧れる理想の家です。
自然素材ならではの魅力が感じられる無垢材の家ですが、もちろんそれなりのデメリットもあります。
どんなデメリットがあり、どうすればカバーできるのかを正しく理解できれば後悔を防ぐことができます。ぜひ正しい知識を持って無垢材の家を心から楽しんでいただきたいと思います。
無垢材の家とは?
一般的な住宅には複数の木材を接着材などで貼り合わせた「合板」が建材として用いられています。これに対して、天然の樹木から切り出した一枚板などを「無垢材」といい、この無垢材を天井や柱や床に用いた住宅を無垢材の家といいます。
化学物質を用いないためシックハウス症候群など健康リスクが少なく、自然素材のあたたかみや風合いを楽しめるとして多くの方の憧れになっています。ワンランク上の住宅として高い人気を誇ります。
無垢材は針葉樹と広葉樹の2つに分類され、それぞれの代表的な樹種として以下のようなものが挙げられます。
針葉樹
英語ではソフトウッドと呼ばれ、軽くて柔らかいのが特徴です。ヒノキ、スギ、パイン(マツ)などが代表的です。
広葉樹
針葉樹よりも硬いがゆえにハードウッドと呼ばれ、ずっしりと重く強度も高いのが広葉樹の特徴です。オーク、メープル、ウォールナットなどは広葉樹の樹種です。
無垢材の家のメリット
上述の健康面のみならず、無垢材の家には以下のような多くのメリットがあります。
- 耐久性が高い
- あたたかみのある見た目や風合い
- 肌ざわりの良さ
- 調湿効果で快適
- 森林浴のようなリラックス効果
耐久性が高い
無垢材は合板よりも耐久性が高いのが特徴です。たとえば国産のヒノキ材は伐採されてから200年間かけて徐々に強度が増していき、そこから1,000年間をかけて元の強度に戻っていくといわれています。歴史的な建築や古民家などには無垢材が用いられており、多くの建築が建材であることからもその耐久性の高さがわかります。
あたたかみのある見た目や風合い
天然の樹木から切り出した一点ものの無垢材は、自然素材ならではのナチュラルなあたたかさが魅力です。ひとつとして同じものがない木目の美しさや木のぬくもりは経年によって美しさを増し、「古美る」などと表現されます。
肌ざわりの良さ
無垢材は住宅では床に用いられるのがポピュラーであり、素足で触れた際のやわらかな心地よさは合板のフローリングでは決して感じられない贅沢な感覚です。
熱を伝えにくい性質のため冬でも冷たさを感じにくく、自然素材だからこその独特の凹凸感ややわらかさが生み出す快適さは、無垢材最大の魅力ともいえます。
調湿効果で快適
熱を伝えにくい一方で、呼吸するように湿度を吸い込んだり吐き出したりする吸湿性能に優れることも無垢材の特徴でありメリットでもあるポイントです。
この効果によって室内の湿度が快適に保たれるため、夏は涼しく冬はあたたかい状態をキープしてくれます。快適なだけでなく空調費を抑える省エネ効果もあります。
森林浴のようなリラックス効果
樹木から発せられる芳香成分は人にリラックス効果をあたえます。森林浴という言葉はまさにこの効果から来ており、無垢材の家は樹木が放つ素材の香りによってまるで森林浴をしているかのような落ち着きを感じることができます。
無垢材の家のデメリット
数多くのメリットがある一方で、たくさんの方が「住んで初めて気付いたデメリット」によって無垢材の家を選んで後悔しているのも事実です。
以下のようなデメリットが許容できるかどうか、ぜひチェックしてみてください。
- 素材の品質が一定ではない
- 変形・割れ・床鳴り
- 変色する
- ヘコみやすい・傷つきやすい
- シミができる
- 手入れが必要
- 特定の暖房器具と相性が悪い
素材の品質が一定ではない
人工的に加工しないことが自然素材の良さではありますが、一点ものゆえのバラつきが気になる人にとってはデメリットにもなり得ます。木目や色味などは素材ごとに異なりますので、これを味わいだと思えるかどうかで判断は変わってくるでしょう。
変形・割れ・床鳴り
吸湿性能というメリットは、一方で素材の変形というデメリットも同時にもたらします。無垢材は水分を吸い込むと膨張し、乾燥すると収縮します。これによってわずかに形が変わってしまうので、フローリングにスキマが空いてゴミが溜まったり、一部に割れが生じたり、きしむような音を立てたりすることがあります。
変色する
無垢材は人の脂が染み込んで深い色味になったり、日に焼けたりすることで徐々に変色していく特徴があります。これも味わいのひとつなのですが、変色の度合いも箇所によってバラつきがあったりするため均一にはならず、気になる人にとってはデメリットになってしまいます。
ヘコみやすい・傷つきやすい
肌ざわりが良いことは無垢材の最大の魅力のひとつです。この肌ざわりは主に素材のやわらかさによるものであるため、すなわち物をぶつけたり落としたりするとすぐにヘコんでしまう・傷がついてしまうという弱点にもつながります。
他の特徴と同様にこれもまた経年による味わいであると感じる人もいれば、どんどん傷が増えていくことを不快に思う人もいるでしょう。
シミができる
無垢材の表面には無数の細かい穴が空いており、これが特有の吸湿性を発揮するのですが、同様にこぼした水分もすばやく吸収してしまうのでシミになりやすくなってしまいます。
特に色の付いた液体の場合は濃いシミになりやすい他、ただの水であっても素材表面の汚れと一緒に染み込んでしまえばシミになり得ます。
手入れが必要
たとえば上述のシミは、液体をこぼした後に素早く拭き取ればある程度防ぐことができます。ただしやはり合板のフローリングなどと比べれば手間がかかると言わざるを得ません。他にも定期的なメンテナンスとしてワックスやオイルを年に1~2回程度かけなければならないなど、どうしても手入れが必要になる点はデメリットと言うことができます。
特定の暖房器具と相性が悪い
乾燥によって変形したり割れたりする無垢材は床暖房・コタツ・ストーブなど一部の暖房器具との相性が悪く、場合によっては使えないようなケースがあります。
せっかく冬もあたたかいことが利点でもある無垢材でも、想定外の暖房制限がかかってしまうようではデメリットであると言わざるを得ません。
無垢材の家のデメリットをカバーするには
メリットや恩恵も多い一方でたしかにデメリットもある無垢材の家も、正しい付き合い方ができればある程度その弱点をカバーすることができます。
無垢材の家を検討している方は、以下のポイントを確認して「こんなはずじゃなかなった」という事態を避けてください。
メンテナンス
無垢材の仕上げには、無塗装・オイル塗装・ウレタン塗装の主に3つの種類があります。
無塗装であれば日頃の乾拭きを、オイルやウレタン塗装であれば年に1~2回のかけ直しを行いましょう。これによって割れや変形、シミなどの影響を受けにくくすることができます。
木遣い
無垢材の木は、自然素材ゆえの特性を多く持っています。その特性は樹種によって異なる他、加工の仕方や乾燥の具合、用いる場所によっても効果に差が現れてきます。このようなわずかなクセを理解し、どんな素材を・いつ・どこに用いるかに精通した知識を「木遣い」といいます。
熟練の職人のみが有するスキルのひとつで、施主の立場からすれば無垢材の家を建てる施工業者がこの木遣いに長けているかどうかが重要な判断基準のひとつになります。
まとめ
住まいを建てる多くの人の憧れである無垢材について、そのデメリットをまとめました。
無垢材の家に限らずどんなものにもそれぞれのメリット・デメリットはありますが、大切なのはそれを事前に正しく理解しておくことです。
この記事の目的は読者に無垢材の家にネガティヴなイメージを持ってもらうことではありません。せっかく魅力たっぷりの無垢材の家を建てた方が、知識不足のために後悔することのないようにという想いで書きました。
正しい理解と心構えをもって、ぜひ無垢材の家の素晴らしさを感じていただきたいと思います。